恋って、いつから始まってたんだろう――。

アニメ『ウィッチウォッチ』第6話「縁結びの樹の下で」は、そんな問いを静かに差し出してくるエピソードです。 いつも隣にいたはずのモリヒトが、気づけば周囲の女子たちから注目され始めている。 それに気づいてしまった瞬間、ニコの胸には「焦り」と「寂しさ」が同時に湧いてきます。

でも、それは嫉妬や独占欲なんかじゃない。 言葉にできなかった「好き」の気持ちが、ようやく自分の中で姿を持ちはじめた、そんな時間だったんです。

縁結びの樹の伝説にすがるように、ニコは“想いを伝える勇気”を探します。 これは、ただの恋の話じゃない。 誰かを好きになったことがあるすべての人に響く、心の揺れの物語なんです。

ニコが焦った理由とは？アニメ6話で描かれた“モテ始めたモリヒト”

「あれ……なんか最近、モリヒトって、ちょっとカッコよくなってない？」

そんな何気ない女子たちの会話が、ニコの耳に届いたとき――彼女は初めて、自分の中の“違和感”に気づいたのかもしれません。

『ウィッチウォッチ』6話では、これまで無自覚だったモリヒトが、周囲からじわじわと“モテ”の気配を感じさせる場面がいくつも描かれます。 運動神経もよくて、料理もできて、責任感も強い。冷静だけど優しい。 そんな彼が「ただの幼なじみ」じゃなくなっていく予感――それは、ニコにとって初めての“焦り”として胸に刺さったのです。

しかもそのモリヒトは、ニコの気持ちにまったく気づかない。 だからこそ、余計に苦しい。 自分の中では、もう特別な感情になっているのに、相手はずっと“日常”のまま。 この温度差が、ニコの心をゆっくりと追い詰めていきます。

焦りは、好きの裏返し。 「取られたくない」なんて、そんな大げさなものじゃない。 ただ、隣にいる時間がこれからもずっと続いてほしい――それだけなのに、 それが叶わないかもしれないと知った瞬間、人はこんなにも不安になるんだな、と。

縁結びの樹とは？遠足先・不達山に込められた伝説と告白の舞台

不達山（ふたつやま）――その名前の響きだけで、どこか不思議な運命を感じた人もいたかもしれません。

『ウィッチウォッチ』第6話でクラスの遠足先として登場するこの山には、「縁結びの樹」という伝説が残されています。 その下で男女が待ち合わせをして、一緒にお昼ごはんを食べると結ばれる――。

まるで昔話のような、でも誰もが一度は信じてみたくなる恋のジンクス。 そんな場所が、“想いを伝えたい”ニコにとってどれほど意味を持つ場所だったかは、想像に難くありません。

告白って、ただ言葉を口にすることじゃない。 「どこで」「どんな空気で」「どんな気持ちで」伝えるかで、そのすべての記憶が決まってしまう。 だからこそ、ニコは“この場所”にかけたんです。

でも、あの樹はただの舞台装置なんかじゃない。 ニコの気持ちが揺れて、迷って、それでも踏み出そうとしたその一歩を、そっと見守る“物言わぬ証人”のような存在だったと思うのです。

「もしここで伝えたら、変わってしまうかもしれない」 そう思いながらも、変わらないことのほうが怖かった――。 縁結びの樹は、そんな揺れる心に、そっと背中を押してくれるような場所でした。

カンシの後押しとニコの決意。魔法よりも“勇気”が必要な瞬間

「言ったほうがいいよ。好きなんでしょ？」

このセリフを投げかけたのは、誰よりも空気が読めない…はずのカンシでした。

けれど6話の彼は、少し違っていた。 ニコの中に芽生えた感情を、誰よりも早く察して、誰よりも優しく背中を押したのは、間違いなく彼だったんです。

魔女であるニコは、どんな呪文だって使える。 でも、“心”には効かない。 モリヒトの気持ちを操る魔法なんて存在しないし、自分の胸に湧き上がるこのドキドキを消す呪文もない。

だからこそ、必要だったのは「魔法」じゃなくて「勇気」。 ほんの一歩踏み出すだけの、でもその一歩が、今のニコにはとてつもなく大きなものだった。

カンシのように、誰かの本心を笑わずに受け止めてくれる存在が、どれほど尊いものか。 照れくさくて、鬱陶しくて、でもあの言葉がなかったら、きっとニコは動けなかった。

告白って、たった一人でするものじゃないのかもしれません。 誰かの“わかってるよ”というまなざしがあって、ようやく立てる場所なのかもしれない――。 ニコの決意は、そんな小さな「信頼」の上に成り立っていたんだと思います。

恋愛未満の微妙な距離感。モリヒトの鈍感さは優しさなのか？

ニコがどれだけ焦っても、どれだけ視線を向けても―― モリヒトは相変わらず、無表情で、いつもの距離で、ただ淡々と接してくる。

視聴者としては思わず「気づいてあげてよ…！」と声をあげたくなる場面が何度もありました。 でも、モリヒトの“鈍感さ”は、ほんとうにただの無神経だったのでしょうか？

彼の中には常に「守るべきもの」があって、それが魔法だったり、日常だったり、何より“ニコ自身”だったりします。 たとえばもし、モリヒトがニコの気持ちに気づいて、それを受け入れたとき―― その関係が変わってしまうことを、どこかで本能的に恐れているようにも見えるのです。

人との距離を保ちすぎる人は、実は一番“誰かを傷つけること”を怖れている。 だから、あえて一線を引いて、曖昧なまま日々を続けようとする。 モリヒトの無自覚さには、そんな“やさしさの防御”が隠れている気がしてなりません。

ニコが少しずつ前に進もうとしている一方で、モリヒトは“今のまま”でいる。 その微妙なバランスが、このふたりの関係性を「恋愛未満」にとどめているのです。

でもそれは、決して悪いことじゃない。 焦らず、急がず、少しずつ心がほどけていく物語もある。 そう信じたくなるような、“ふたりの空気”がこの回にはありました。

『ウィッチウォッチ』6話感想｜縁結びに願ったニコの恋は叶うのか

告白は、される側じゃなく、する側の物語なんだと思う。

『ウィッチウォッチ』6話で描かれたのは、まだ“叶っていない恋”です。 けれど、そこには失恋よりも深い切なさがありました。 なぜなら、ニコは自分の中にある「本当の気持ち」と、ようやく向き合い始めたから。

縁結びの樹の下で一緒にお弁当を食べれば結ばれる――そんなおまじないにすがるしかなかった気持ち。 “魔法”を使えば簡単に恋が叶うかもしれないのに、彼女がそれを選ばなかったのは、きっと「ちゃんと伝えたい」と思ったから。

恋って、叶うかどうかよりも、「願った」という事実が、人を変えていくんですよね。 不器用でも、勇気がなくても、心が震えたあの瞬間は、本物だった。 それだけで、ニコの恋はもう、十分に“動き出して”いるんだと思います。

だからこの6話は、恋が実ったかどうかを描く話ではなく、 「恋が始まったときの痛みとときめき」が、どれだけ眩しいかを描いた回だったんじゃないでしょうか。

叶うかどうかは、まだわからない。 でも――こんなにも誰かを大切に思えた自分を、きっとニコはもう嫌いにならない。 それが、この恋のいちばん美しいところです。

まとめ：恋するすべての人に届く、ニコの“ひとつの覚悟”

『ウィッチウォッチ』第6話は、ドキドキする恋愛回というよりも、 “好きになることの痛み”と、“それでも伝えたい気持ち”を描いた、まっすぐで、やさしい物語でした。

ニコは、魔法じゃなく、言葉で想いを届けようと決めた。 その選択は、不器用で、回り道かもしれないけれど―― だからこそ、彼女の一歩には「覚悟」がありました。

想いが届くかどうかは、誰にもわからない。 けれど、恋をしたあの日から、わたしたちはもう、ひとりきりじゃなくなるんです。

“いつもそばにいる”ことが当たり前だった関係に、 “好き”という気持ちが宿ったとき、世界はほんの少しだけ変わり始める。

ニコの小さな勇気は、きっと、誰かの「いま」にも届くはず。 まだ伝えられていない気持ちがある人にこそ、この6話はそっと寄り添ってくれるはずです。

放送日：2025年5月11日（仮）

原作：篠原健太

アニメ制作：J.C.STAFF

公式サイト：https://witchwatch-anime.com/