「人は、なぜ忘れられずに、彷徨うのか。」
『出禁のモグラ』最新刊9巻では、7巻から張り巡らされていた“少女霊”の謎がついに明かされます。
真木、八重子、そしてモグラが辿り着くのは、ひとりの少女の祈りの残響——。
この記事では、最新話のネタバレを含みつつ、その奥に潜む“感情”の物語を丁寧に解き明かしていきます。
- 『出禁のモグラ』9巻の発売日と特装版の内容
- 少女霊・川上フユミの正体とその切ない背景
- モグラという存在の意味とアニメ化への展望
出禁のモグラ最新話|9巻で描かれた“少女霊”の正体とは?
彼女は、ただ「見てほしかった」だけだったのかもしれない。
『出禁のモグラ』9巻の核心は、ひとりの少女霊・川上フユミの正体に迫る物語でした。真木と八重子が心霊写真を手がかりに彼女の“声なき声”を拾い上げていく中で、私たちはこの物語が単なる除霊譚ではないことに気づかされます。
霊となってさまようフユミは、死んだあとも「日常」に取り残され続けていた。生きていた頃の自分を誰も覚えてくれない、家族は崩壊し、自分が確かにここに“いた”という証を求めて、彼女は幻術の中に“ワンダーランド”を築いていたのです。
それは夢のように可愛くて、でもどこか寒々しい幻想の世界。彼女の未練と願いが形を変えて、他者を引き込む力になっていた。そして、その中心には、「自分はちゃんと愛されていたのか?」という問いが、ずっと消えずに残っていた——。
“祓う”ことがゴールじゃない。モグラたちが本当にしたかったのは、“その想い”に触れてあげることだった。
『出禁のモグラ』は、怨念よりも哀しみを、“祟り”よりも“孤独”を描く物語です。フユミの霊は、ただ一言「大丈夫だよ」と言ってほしかった。それは、彼女だけじゃなく、私たち誰もが時に心の奥で叫んでいる、静かな願いなのかもしれません。
9巻ネタバレ|モグラと少女霊、“幻術”と“幻想”が交わるとき
幻術とは、他人の心を欺くもの。幻想とは、自分の心が生んだもの。
『出禁のモグラ』9巻では、モグラと少女霊・川上フユミの力が、まるで鏡合わせのようにぶつかります。モグラは「幻術」を使い、相手の心の隙間に入り込む。対するフユミは、「幻想」という名の孤独な理想郷を築き、そこに自分を閉じ込めていた。
この巻で描かれるのは、“戦い”ではなく“交錯”です。フユミの作り出した「ワンダーランド」は、美しくも哀しい世界。誰からも責められず、永遠に幼いままでいられる空間。彼女はそこに来た者たちを、優しく、でも確実に引き込もうとする。
一方、モグラはその世界に飛び込み、少女の記憶をひとつひとつ辿っていきます。喪失、拒絶、後悔——それらを「罪」とせず、「祈り」として受け止める。幻術と幻想の境界が曖昧になるその瞬間、読者は“祓う”ことの意味を再び考えさせられるのです。
モグラの正体が明かされる場面も、この“交錯”の中に置かれています。彼はただの“お祓い屋”ではなく、神の罰を受けし者。「百暗 桃弓木(ひゃくあん とうゆみぎ)」という本来の名を持ち、自らの罪を背負いながらも、他者の痛みに手を伸ばす。
だからこそ、彼の幻術はただのトリックじゃない。“寄り添うための嘘”。その温度に、読者もまた救われてしまうのです。
7巻からの伏線回収|川上フユミの過去が語る“喪失”と“孤独”
人は、何を失ったときに「幽霊」になるのだろう。
7巻から描かれてきた少女霊・川上フユミの存在は、当初ただの“厄介な霊障”として登場しました。写真に写り込む、学校に現れる、不気味で、でもどこか悲しげな影。その違和感は、9巻でついに核心へと辿り着きます。
フユミは、生前いじめを受けていました。自分の居場所がなく、母親との関係もギクシャクしていた。救いになるはずの家庭も、彼女にとっては「寂しさの再確認」でしかなかった。そんな中で彼女は、どこにも居場所がないまま、ひっそりと命を落とします。
7巻では、そんなフユミの死後の描写が伏線として織り込まれていました。家族の崩壊、地域の無関心、そして誰も真相を語らないまま風化していく“少女の不在”。それは、「いなくなった」というよりも、「もともと見えていなかった」ような喪失でした。
だからこそ、彼女は“幽霊”になったのです。誰かに気づいてほしかった。誰かに「君はちゃんとここにいた」と言ってほしかった。彼女の幻想が他人を巻き込むほど強かったのは、そこに“孤独”だけじゃなく、“愛されたい”という切実な願いがあったから。
伏線は回収されただけでなく、ひとつの“問い”に形を変えて私たちに返ってきます。——誰の記憶にも残れなかった人生は、本当に存在していなかったことになるのか?
『出禁のモグラ』は、そうした静かな喪失に光を当てる物語でもあるのです。
出禁のモグラ最新刊(9巻)発売日と特装版の魅力
“手元に置きたい”と思える漫画は、年に何冊あるだろう。
『出禁のモグラ』第9巻は、2025年4月23日に発売されました。前巻のラストで姿を現した少女霊・川上フユミの物語がついに決着し、物語の中核にある“モグラの正体”にまで踏み込む展開となっています。
通常版だけでも読み応えは十分ですが、今回注目を集めたのは特装版の存在です。9巻特装版には、江口夏実氏による描き下ろしイラストをふんだんに使用した『日めくりカレンダー』が付属。
これはただのカレンダーではありません。一日一日がまるで“モグラたちの記憶”のように積み重ねられたアート作品。季節を感じさせる柔らかい色彩、物語の情景を切り取った1枚1枚が、読む人の感情をそっと撫でてくれる。
“読む”だけではない、“暮らしの中に置ける物語”。それが、この特装版の最大の魅力です。
もちろん、巻末には作者によるあとがきや、シリーズの世界観をより深く理解できる解説ページも収録。特装版を選ぶ理由が、ファンにとっては“贅沢”ではなく“必然”になるような構成になっています。
9巻は、物語的にもグッズ的にも、『出禁のモグラ』という作品が「日常に寄り添う祈り」であることを改めて感じさせてくれる一冊です。
“出禁のモグラ”アニメ化目前|物語はどこへ向かうのか?
この物語は、“終わらせ方”にすべてがかかっている。
2025年7月からTVアニメがスタートする『出禁のモグラ』。声優・中村悠一が主人公モグラを演じることも話題となり、原作ファンの期待が高まる中、物語は9巻を経て新たな局面に突入しています。
これまでの“祓い”のエピソードは、実はモグラという人物——いや、「百暗 桃弓木(ひゃくあん・とうゆみぎ)」という存在の罪と祈りを浮かび上がらせるための布石だったのかもしれません。
アニメ化に際し、原作が描いてきた「ただの除霊話ではない」という哲学的な核が、どこまで伝わるかがひとつの鍵になります。彼はなぜ神に裁かれ、なぜ“祓う者”であり続けるのか? 己の傷を抱えながら、それでも他者の傷に手を伸ばす理由は?
9巻でフユミを救ったあと、物語は“もっと深い闇”へと足を踏み入れようとしています。それは、人間の心の中にある「忘れられたものたち」——愛されなかった記憶、癒されなかった痛み、言葉にされなかった感情。
アニメ版では、おそらく物語の“序章”ともいえるエピソード群が丁寧に描かれるでしょう。しかし、原作を追っている私たちは知っているのです。その先にあるのは、モグラ自身の“決着”に向かう、静かで壮絶な旅だということを。
この物語は、幽霊を祓う話ではありません。
「誰にも見つけてもらえなかった感情を、拾い上げる話」なのです。
まとめ|モグラという“罪と祈り”の象徴が問いかけるもの
モグラという存在は、ただの“祓い屋”ではない。
『出禁のモグラ』という作品の中で、彼は常に「他者の痛み」に向き合い続けてきました。けれどそれは正義感や使命感からではなく、自分自身の“贖罪”であり、“祈り”でもあるのだと思います。
彼の幻術は、真実を隠すための嘘ではなく、誰かの心を包むための柔らかいヴェール。その“やさしい嘘”こそが、最も誠実な行為なのだと、この物語は教えてくれます。
9巻では、川上フユミという少女の魂を通じて、「人はなぜ取り残されるのか」「誰かの記憶に残れなかった命は、どう生き返るのか」という深い問いが提示されました。そして、その問いに、モグラは言葉ではなく“まなざし”で応えようとする。
彼が背負っているのは、神の罰。だけどその眼差しの先には、いつも“誰かの救い”があります。
だからこそ、読者である私たちもまた、モグラに救われてしまうのです。
“出禁のモグラ”は、幻想でも怪異でもない、「人の感情と祈り」そのものを描く物語。
もし、あなたの中にも“誰にも気づかれていない痛み”があるのなら——
この作品は、そっとその心に手を伸ばしてくれるかもしれません。
- 『出禁のモグラ』9巻の発売日は2025年4月23日
- 少女霊・川上フユミの正体とその過去が明らかに
- 幻術と幻想が交錯する心霊バトルの核心を描写
- モグラの正体「百暗 桃弓木」の名と罪の背景
- 9巻特装版には日めくりカレンダーが付属
- 7巻からの伏線が感情的に回収される展開
- 2025年7月よりアニメ放送開始予定
- “祓い”ではなく“祈り”を描く物語の本質
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