『サイレント・ウィッチ』WEB版ガイド|“なろう”と“カクヨム”に宿る、沈黙の魔女の原点

異世界・ファンタジー

 たとえば、誰かの気持ちに寄り添いたいと願ったとき。
 その人の“最初の声”に耳を澄ますのは、とても大事なことなのだと思います。

 『サイレント・ウィッチ』という物語の始まりは、紙の本よりも、静かなWEBページの中にありました。
 「小説家になろう」という場所で、そして今も「カクヨム」という場所で、モニカ・エヴァレットの沈黙が少しずつ語られていく──。
 この記事では、“WEB小説”という原点に立ち返りながら、その静けさが、どのように人の心に届いたのかを丁寧に追っていきます。

この記事を読むとわかること

  • 『サイレント・ウィッチ』WEB版の掲載状況と出発点
  • なろう版とカクヨム版の違いや、未完の理由
  • 書籍版との構成・描写の差異と読む順番のヒント

1. 『サイレント・ウィッチ』はどこから始まったのか|“小説家になろう”の原初の物語

 物語の源流は、ネットの静寂から。
 『サイレント・ウィッチ』は、依空まつり先生が2020年2月に「小説家になろう」で連載を開始したWEB小説が原点です。
 累計1.3億PVを超える人気を誇り、読者と作品の距離感が近い“なろう”という土壌で、その静けさは大きく広がっていきました。

 “なろう発”というのは、単なる出自ではありません。
 投稿というライブ感、更新ごとの期待、そして“完結しないという余白”──すべてが作品の個性を形づくっていました。

 モニカの“沈黙”と内面の揺らぎは、読者の想像と共鳴しながら、ネットの空気の中でこそ、深く浸透していったのです。

2. 未完の終わりがくれた余白|なろう版の完結しなかった理由と、読後の余韻

 “完結していない”という事実が、物語を弱くするとは限らない。
 『サイレント・ウィッチ』の「小説家になろう」版は、2022年10月に更新が止まり、現在は未完のままです。

 けれどそこには、「この先はあなたの心で読み進めてほしい」とでも語りかけるような、やさしい余白がありました。
 語られないからこそ生まれる感情の余韻──それこそが、この作品の“沈黙”の本質だったのかもしれません。

 物語は途中で途切れているのに、不思議と“続いている感覚”だけが胸に残る。
 語らなかったことで、より深く伝わるものがある。それが、このWEB版の魅力でした。

3. “もうひとつの入り口”としてのカクヨム版|書籍準拠の展開と、試し読みの世界

 『サイレント・ウィッチ』には、もうひとつの静かな入り口があります。
 それがKADOKAWAが運営するWeb小説サイト「カクヨム」に掲載された、書籍準拠の試し読み版です。

 カクヨム版では、第1巻に相当するエピソードが部分的に公開されており、本編の導入や雰囲気を掴むには最適。
 読者は書籍購入前に、モニカの“沈黙”がどう描かれているかを実感することができます。

 この“試し読みの入り口”は、読者にとっての気軽な接点であり、作品と心が自然に触れ合う場になっています。

4. スピンオフと外伝の掲載状況|WEB上で広がる、別のまなざし

 物語は、中心だけでなく、その周縁にも光を宿します。
 『サイレント・ウィッチ』には、モニカ本人以外の視点で語られるスピンオフや外伝も存在します。

 とくに注目したいのが、『サイレント・ウィッチ外伝 沈黙の魔女の隠しごと』。
 これは書籍として刊行されていますが、一部はカクヨムでも試し読みが可能です。

 本編では見えにくかった“誰かのまなざし”が、物語の輪郭をそっと補完してくれます。
 こうした外伝が静かに物語世界を支えている点も、WEB小説の魅力のひとつです。

5. 書籍版との違いは?|WEBと本、それぞれの“沈黙の質感”

 同じ『サイレント・ウィッチ』でも、読むメディアによって受け取る“沈黙”の感触は異なります

 WEB版は、連載という時間の流れと、読者の“追いかける体験”が前提。
 そのため、更新と未完が生む余白が、モニカの“声にならない感情”と呼応していたのです。

 一方、書籍版では物語構成や文章がより精緻に整えられ、挿絵・章構成・デザインが与える余韻が大きい。
 沈黙が“形あるもの”として手に残るのが、紙の本ならではの魅力といえるでしょう。

6. まとめ|文字になる前の想いを、もう一度聴くということ

 『サイレント・ウィッチ』という物語は、ただの小説ではない。
 それは、言葉になる前の“想い”を、沈黙のなかから丁寧に掬い上げようとした記録だ。

 “なろう”という場で始まり、書籍という形に結晶し、カクヨムやスピンオフで枝分かれしていく物語の線。
 どの“声”にも、共通して響いているのは、静けさに宿る感情だと思う。

 未完であっても、試し読みだけであっても、そこには確かに“誰かの心が震えた瞬間”がある。
 その震えに、そっと耳を傾けること──それが、この物語の正しい読み方なのかもしれない。

 ページを閉じたあと、ほんの少しだけ胸が温かくなるなら。
 たぶんそれで、じゅうぶんなんだと思う。

この記事のまとめ

  • WEB版『サイレント・ウィッチ』は「小説家になろう」から始まった
  • なろう版は未完ながら“余白”としての価値がある
  • カクヨムでは書籍準拠の試し読みが可能
  • WEB上にはスピンオフや外伝も掲載されている
  • WEBと書籍、それぞれで“沈黙”の描かれ方が異なる

コメント

タイトルとURLをコピーしました