たぶんそれは、“ひとつの声”では届かなかった場所だった。
アカペラをテーマにしたTVアニメ『うたごえはミルフィーユ』は、ひとりひとりの「声」が重なって生まれる物語です。
注目すべきはそのキャスト陣。新人声優から実力派までが揃い、キャラクターとともに成長していく姿は、まるで作品のテーマそのもの。
この記事では、主要キャラクターとその声を担う声優たちの背景、魅力、そして“重なり合う意味”を丁寧に掬い取ります。
この記事を読むとわかること
- 『うたごえはミルフィーユ』の声優キャスト情報と担当キャラ
- キャスト陣の演技とリアルな成長の重なり
- アカペラ表現を通じて描かれる“声”の物語性
うたごえはミルフィーユとは?──“声”が紡ぐアカペラ青春物語
アニメには、「静かにして強い」主題を持つ作品があります。
『うたごえはミルフィーユ』──通称“うたミル”は、まさにその一つ。
テーマは「アカペラ」。けれどこれは、音楽アニメというよりも、“誰かと重なり合うことの難しさ”と“それを受け入れるまでの時間”を描いた青春群像劇です。
舞台は私立・山ノ辺高等学校。アカペラ部の6人を中心に、声だけで音楽を紡ぐという“制約”の中にある可能性と、それぞれの「音にならない気持ち」が丁寧に拾い上げられていきます。
「ただ歌うだけじゃ、届かない」。
でも、そこに誰かが寄り添ってくれたとき──その歌は、記憶になる。
そんな静かで、でも確かな共鳴が、この作品の真ん中にはあります。
たぶんそれは、うまく言葉にできなかった自分への応援歌なんです。
見ているうちに、自分の中の“届かなかった声”が、そっと浮かび上がってくるような──そんな作品です。
うたごえはミルフィーユの主要声優一覧
この作品で特筆すべきは、声優陣の“リアルな成長”とキャラクターの成長が地続きで描かれていること。
「声優として初挑戦」の新人と、「歌」に想いを持つ経験者が同じスタートラインに立ち、アカペラという“ごまかしのきかない表現”に真正面から向き合っているのです。
ひとりの声では足りない。
でも、ひとりひとりの声が重なったとき、“誰かに届く音楽”になる──。
その過程を体現しているのが、以下のキャストたちです。
小牧嬉歌役:綾瀬未来──“素の声”から始まる物語
小牧嬉歌(こまき うた)は、どこか抜けていて、でもまっすぐで、「声に自信がない」というコンプレックスを抱えながらも音楽に惹かれていく少女です。
アカペラ部の扉をたたいた彼女の“最初の一歩”は、不器用だけれど、とても誠実でした。
そんな彼女を演じるのは、綾瀬未来さん。なんと本作が声優初挑戦となる、現役女子高生です。
その“経験のなさ”がむしろ、嬉歌の不器用な真っ直ぐさと見事に重なり、演技というよりも「そのまま彼女として生きている」ような感触を与えてくれます。
たとえば、最初のアカペラ練習シーン。
声が震え、音程もあやふや──でもその中に、「届けたい」という気持ちが確かに宿っている。
それは“うまさ”ではなく、“素の声”だからこそ伝わるものだったと思います。
このキャラクターと、この声優の出会いは、うたミルという作品にとっての“最初の奇跡”だったのかもしれません。
繭森結役:夏吉ゆうこ──声楽仕込みの真摯な響き
繭森結(まゆもり ゆい)は、いわばアカペラ部の“柱”のような存在です。
冷静でストイック、そして何より「音に対して誠実であること」を誰よりも大切にしている少女。
その凛とした姿勢は、時に周囲と衝突することもあるけれど──実は誰よりも、「誰かと歌うこと」に憧れていた人でした。
そんな繭森を演じるのは、夏吉ゆうこさん。
彼女自身が声楽の訓練を受けたバックグラウンドを持ち、「歌を伝える」ことへの理解と覚悟が、演技ににじみ出ています。
音を合わせるときの緊張感。
リードを任されたときの責任感。
そして、他のメンバーの成長に戸惑いながらも、「自分も変わらなければ」と葛藤する姿。
どの瞬間も、その声は揺れず、でも少しずつ、やわらかくなっていくのです。
“完璧さ”ではなく、“一緒に響く”こと。
それを理解していく繭森の歩みは、夏吉さんの声の芯の強さによって、静かに説得力を増していきます。
古城愛莉役:須藤叶希──笑顔と音を繋ぐリズムメーカー
古城愛莉(こじょう あいり)は、アカペラ部の部長であり、明るく社交的なムードメーカー。
でもその明るさは、ただの“キャラ付け”じゃない。
彼女は誰よりも、「みんなが気持ちよく歌える空気」をつくることに、心を尽くしている人です。
愛莉を演じるのは、須藤叶希さん。
彼女の声には、自然と周囲を巻き込むような、軽やかで温かなリズムがあります。
その声が響くたび、画面の空気が少しやわらぎ、“歌うこと”の楽しさがふっと立ちのぼるような瞬間がある。
何気ない掛け合いや、ふとした笑いの中で──
音と人を繋げる役割を、愛莉というキャラクターは果たしています。
その“軽やかさの裏にある気遣い”を、須藤さんは絶妙なバランスで演じているんです。
「この子がいるから、部が回っている」
そう思わせる説得力は、キャラだけじゃなく、声優の温度から生まれているのだと思います。
近衛玲音役:松岡美里──“静かさ”が引き出す強さ
近衛玲音(このえ れいね)は、アカペラ部の副部長。
文武両道、どこか中性的な雰囲気をまとった彼女は、言葉より“存在感”で場を整えるタイプです。
静かにして圧倒的。でも、その強さは決して前に出ようとはしない。
そんな玲音を演じるのは、松岡美里さん。
彼女の声は、どこか“引き算”の美学を感じさせます。
大きく感情を動かすでもなく、語気を荒げるでもなく──それでも届く、芯のある低音。
とくにハーモニーの中に彼女の声が加わると、
音全体の輪郭がすっと引き締まるような感覚があります。
主張しないけれど、欠けたら全体が崩れる──そんな役割を担っているのは、玲音というキャラクターであり、松岡さんの声なのです。
感情を爆発させる場面より、無言の「わかってるよ」という瞬間に宿る熱量。
松岡美里という声優の“静かで強い芝居”が、玲音の立ち位置に深みを与えてくれます。
宮崎閏役:花井美春──音で空気を変えるボイパの表現者
宮崎閏(みやざき うるう)は、部内唯一のボイスパーカッション担当。
派手な金髪、自由奔放な言動──その見た目に反して、「音の空気を読むこと」に長けた繊細な表現者です。
彼女が入ってくるだけで、空気が変わる。
会話に、練習に、そして音楽に──その瞬発力と直感が、アカペラに必要な“息吹”を吹き込む。
それは、単なるリズム担当ではなく、「グルーヴの源」なのです。
演じるのは、花井美春さん。
花井さんは、舞台経験も豊富で、身体から滲むような表現力に定評があります。
とりわけ宮崎閏のボイパには、「声で世界を変える」感触が宿っている──それを成立させているのは、花井さんの研ぎ澄まされた“間”と“呼吸”なんです。
彼女がリズムを刻み始めると、他のメンバーの声が自然と引き寄せられていく。
“派手な子”ではなく、“支える子”としての一面が、次第に際立ってくる構成にも注目です。
熊井弥子役:相川遥花──低音に宿る物語性
熊井弥子(くまい やこ)は、アカペラ部のベースパート担当。
目立たず、口数も少ない──けれど、彼女の声があることで全体の音が支えられている。
その“気づかれにくい大切さ”こそ、弥子というキャラクターの本質です。
低くて柔らかい声。
時折聴こえるハミングのようなハーモニー。
「聴き取りにくいけど、いなくなると寂しい」──そんな声の温度を、相川遥花さんは見事に体現しています。
弥子は、感情を言葉で表現するのが苦手な子です。
けれど、歌になると、そこに強い想いが浮かび上がる。
それはつまり、「音の中でしか語れない物語」を背負った存在なのです。
相川さんの演技は、台詞よりも“沈黙の余白”に説得力があります。
声の響きが低くなることで、聴き手の心に“間”を生み出す。
その静かな力が、アカペラ部というチームのバランスをそっと保っているのです。
Parabolaのキャスト陣──物語を揺らすもうひとつの声たち
本編のアカペラ部メンバーとは別に、「Parabola(パラボラ)」というユニットの存在が、物語に新たな重力をもたらします。
彼女たちは“別の場所”から声を響かせる存在──言い換えれば、「自分たちの音」をすでに見つけている側です。
その歌声は洗練されていて、まとまっていて、ある種の完成形を思わせる。
でも、その“完成”が持つ孤独や、「何を目指せばいいのか」の問い直しもまた、彼女たちの物語には息づいています。
そんなParabolaのキャストには、実力と経験を兼ね備えた声優陣が名を連ねています。
- 藤代聖(CV:小泉萌香)──クールな佇まいと芯の強さが印象的なリード。
- ゾーイ・デルニ(CV:亜咲花)──グローバルな視点を持つ、音の旅人。
- 仙石喜歌(CV:東山奈央)──経験値と包容力、声に漂う余裕の深み。
- 環木鈴蘭(CV:青山吉能)──独特の間とセンスでユニットに色を添える。
- 南佳凛(CV:KIYOZO)──人間の限界を超えるヒューマンビートボクサー。HBB担当。
彼女たちは物語における“対比”であり、同時に“鏡”でもある。
アカペラ部の不安定なハーモニーとは対照的な、「整った強さ」が、時に刺激となり、時に壁となって立ちはだかります。
同じ“声”を使っていても、響かせ方はこんなにも違う。
その対比が、「声とは何か」「伝えるとはどういうことか」を、観る者に問い直させるのです。
声優陣の挑戦──“歌うだけじゃない”ということ
本作『うたごえはミルフィーユ』が、他の音楽アニメと一線を画す最大の理由──
それは、「声優たち自身が、アカペラ未経験から挑戦している」という現実と、それを“物語として描いている”という点にあります。
綾瀬未来さんは、現役高校生にして本作で声優初挑戦。
彼女にとって、マイクの前で声を出すことも、アカペラのハーモニーに入ることも、すべてが“はじめて”の経験です。
そのぎこちなさや戸惑いこそ、キャラと重なるリアルな感情の源になっている。
他のキャストも同様です。
実力派の声優たちが、「ただ演じる」のではなく、「自分自身が歌と向き合う」という工程を経て、
キャラクターと一緒に“できるようになる”過程を生きている──そこに、この作品の特別な熱があります。
公式ドキュメンタリーや矢印トークでは、その挑戦の裏側も丁寧に記録されています。
練習の息苦しさ。リズムが合わない苛立ち。
でも、ある日ふと、「あ、今、合ったかも」と顔を見合わせて笑う瞬間──その“通じ合いの瞬間”こそ、アカペラの奇跡なんです。
このアニメは、キャストの汗と呼吸を、そのまま物語にしている。
だからこそ、声に、時間が刻まれているのです。
まとめ:この作品に“声”が必要だった理由
『うたごえはミルフィーユ』は、たんに“アカペラを題材にした青春アニメ”ではありません。
それは、「声を重ねることの難しさ」と「重ねた先に生まれる希望」を描いた、ひとつの生き方の記録です。
ひとりで完結する歌よりも、“誰かと合わせる”ことの不安やぎこちなさ。
でもその中で、少しずつ「届く声」になっていく──そんな“成長”ではなく、“交差”の物語。
そして、その声を支えているのは、実際に挑み、もがいている声優たちです。
だからこそ、私たちはそこにリアルを感じ、画面の向こうからも「伝わる何か」があると信じられる。
“うまい声”より、“本気の声”。
“完成された音”より、“一緒に揺れる音”。
このアニメが大切にしているのは、きっとそういうものです。
もし、最近「うまく言葉にならないこと」が増えていたなら。
ぜひ、耳を澄ませてみてください。
誰かの声が、あなたの中の“届かなかった気持ち”を、そっと掬い上げてくれるかもしれません。
この記事のまとめ
- うたミルはアカペラがテーマの青春群像劇
- 綾瀬未来らがキャラと共に“声”で成長する
- 主要キャラ6人と実力派声優陣を徹底紹介
- Parabolaは物語を揺さぶる対照的な存在
- 演技×歌唱の挑戦がリアルな説得力を生む
- “声”に刻まれる感情と物語の深みを実感
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